都会は夜が最高です。何と言っても美しい。今はコロナで夜遊びはできません。あの、都会のネオン街を再び見ることはできるのでしょうか。収束する様子のない状況に不安を感じずにはいられないですね。
当然ですが、夜遅くまで働くと眠る時間は遅くなります。
以前わたしは、少ない給料の大半を、アホみたいに夜の街に捨ててきました。アホですからそんな生活が楽しかったです。実家から通勤していると、親が電気代やガス代を払ってくれるので、アホみたいな生活ができました。
景気が良かった頃は、残業が多かったので、残業手当が含まれた給料が振り込まれていると、それも、毎月毎月数万円づつ多く振り込まれていると、本俸が多いと勘違いしてしまいました。
残業手当が多い=体をすり減らしている という等式が成り立つことは、若くて元気な頃は考えることもなかったです。体力は無限のように思っていたので毎晩、夜更けまで遊んでいても翌日に差し障ることはなかったです。
そんな生活を続けていると、必ずおつりがきます。ある日、急に朝起きられなくなりました。わたしは連日の残業のせいだと思い込み、上司に心の中で毒づきました。アホですね。
毎日さっさと家に帰って早く寝たら、こんな風になっていなかったのでは?と考えなかったのだから情けない。それ以前にひどい不眠症なので、早く布団に入ったところで、どうせ眠れないのだから同じようなものだと思っていました。眠れなくても横になって目をとじているだけでも体は休まったはずなのに。
這うように出勤して青い顔をしていると、女神が現れました。
女神は、「これを飲んでください。」と、1本のアンプルをわたしに手渡してくれました。受け取ったアンプルの冷たさに驚き。女神はわたしのために、近所の薬局へ買いに行ってくれたのでしょう。
ハート形のアンプルカットで、アンプルの首をキコキコしながら女神は、
「実は気になっていたのです。残業して、その後上司のお付き合いをして、それが毎日です。本当に大丈夫なのかといつも思っていました。」
実際のわたしは、まっすぐ家に帰るのがしんどかったのです。仕事が終わって上司と一緒に、は気は休まりませんが、家に帰っても食材がないので食事の支度はできません。よしんば、食材があったとしても、夜遅くに台所で音を立てると両親から苦情が出るだろうと考えただけでうっとうしく感じて、夕食は外で済ませることにしていました。大抵誰かと一緒のことが多いのですが、ある日たまたま一人で食事をしているところに上司とバッタリ出会ったのがきっかけで、上司から誘ってもらうようになりました。
お誘いいただけるのはうれしいのですが、おじさん達は皆食が細くお酒が長いので、適当な時間で切り上げさせてもらいましたが、その後一人で食事をしてから帰宅すると真夜中でした。
女神にありがとうと丁寧にお礼を言って、褐色のアンプルに入った魔法の液体をいただきました。まさに魔法の液体です。わたしは2時間後に昨日よりも一昨日よりもずっと元気になっていました。
女神の思わぬ出現に助けられたわたしは、帰りがけ 近所の薬局に同じような栄養ドリンクを探しに行きました。これ1本で元気になれる!
おい!懲りてないんかーい! やはり、わたしはアホです。自分の生活を顧みることなく栄養ドリンクで疲れを紛らわしていたのです。
栄養ドリンク剤に1ケ月で8万円もかかった。
毎朝、出勤前に薬局に寄って1本飲みます。その日の体調によってドリンク剤の値段が変わります。安いもので2000円。今日の仕事はハードだと思うと3000円。今日は勝負の日だと思ったら5000円。
体を休めることなく、毎晩遅くまで夜遊びに興じて、その疲れをドリンク剤でごまかす。何をしていたのでしょうね。わたしは。
栄養ドリンクには栄養が入っているのか?入っていないのではないかと思います。だって、あれは化学薬品ですよね。強力なカフェインと微量のアルコールが入っています。栄養はないです。
不眠症は立派な病気です。病気である以上原因があります。原因を探りましょう。
当時のわたしは、眠くならない病気だったのだと思います。疲れているからと言って早く寝床に入っても眠れないのです。もともと不眠症だった上に、毎日飲んでいる、あのドリンク剤。あれは、やばいです。
ドリンク剤には体をシャキンとさせる成分が入っています。ぐったり疲れている体が、あれ1本でシャキッとして、1日中元気に仕事ができます。残業もなんのその。残業の労いの食事会と称する赤ちょうちんまで元気に参加できるのです。3000円とか5000円もの高価なドリンク剤は「効いた!」という実感がなければ売れません。そんな高価なドリンク剤を毎日飲んでいれば夜になっても眠くなるはずがないです。今思えば、600円くらいのものにしておけば良かったのにと後悔します。
もともと不眠症であった上に効果抜群のドリンク剤で多大な睡眠負債が出来上がり、疲れのために浪費をしまくるという最悪のスパイラルに陥っていました。
そんな、生活はそう長く続きませんでした。心身ともに悲鳴を上げたわたしは、これ以上無理だと思い辞表を提出しました。
以後、ドリンク剤を飲むことはなくなりましたが、不眠症は相変わらず続いていました。
わたしが、自分が不眠症であることを最初に認識したのは小学2年生のときでした。実際にはうつ病であったことを後に知ることになりますが、これは鶏と卵のようなもので、不眠症が招いたうつ病なのか、うつ病が原因して不眠症になったのかはわかりません。ただ、不眠症が長く続くと、大人になったころには不眠に対する問題意識が薄れていました。
不眠症が病気であることは、当時の世の中では、まだ認知されていなかったと思います。市販薬として睡眠薬が薬局で売られていたのだから小さくは認知されていたかもですが、
「夜、眠れない。」
と言うと「1日中だらだらしているからだ。」とか「運動不足」だとか、一体わたしの何を知っているのかと聞きたくなるような言葉を投げられました。
栄養ドリンクだとか、深夜のぼっちめしとか、疲れ果てて辞表とかは、ただのエピソードにしか過ぎません。しかし、眠らない人は似たり寄ったりの生活を余儀なくされます。辞表まで行かない人もいるでしょうが、眠れなくて苦しんでいる人は幸せではないです。
不眠に悩むと薬に頼ろうとする。
どうしても眠れないのだから、そうなってしまいます。
でも、睡眠薬も、睡眠導入剤も、
それを飲んだからと言って気持ちよく眠れません。今しがた薬を飲んだばかりなのに急に朝になっていた、という印象です。時間が経っていますがぐっすり眠った感覚はないです。もちろん疲れは取れません。
睡眠関係の薬は市販で手に入ります。睡眠導入剤や抗不安薬は内科でも処方してもらえます。
しかし、
なぜ、眠れないのかを考えることが大切です。
それでも、薬が欲しいのであれば、副作用がどのようなリスクがあるのかを調べましょう。
申し訳ないですがここで、わたしがそれについて触れることはできません。
マイケル・ジャクソンの最期の映像をご覧になられた方はたくさんいらっしゃると思います。どうしても眠ることができないマイケルは致死量を上回る眠剤を使ってしまいました。
眠れない辛さは深刻です。
#不眠の経済的損失は甚大